糖尿病で高血糖状態が続くと、体の中の防御反応が低下して感染症にかかりやすくなると言われています。細菌感染を原因とする歯周病においても同様であり、糖尿病の人は、健康な人に比べて歯周病に かかっている確率が2倍以上も高まると言われています。

また、体の中に炎症を悪化させやすくなっているので、歯周病が進行し、 重症化しやすくなるのです。また、歯周病にかかっている糖尿病の人は、糖尿病の合併症である 心臓病で死亡する確率が 2.7 倍、腎臓病で死亡する確率は 4.1 倍も 高くなることも報告されました。実際に歯周病の治療をすると、 ヘモグロビン A1c という血糖値のコントロールの指標の値が低下 することも報告されています。

さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。つまり、歯周病と糖尿病は、交互に悪影響を 及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。

歯周病により、歯肉の中で作りだされる炎症性物質は、血液を介して血糖をコントロールするホルモンであるインスリンの働きを妨げ、 糖尿病を悪化させる可能性があります。特に2型糖尿病の方に関しては、歯周病の歯周治療を行うことで、インスリン抵抗性が改善すること などが報告されており、糖尿病の血清コントロールに歯周治療が重要であることが認識されてきています。

歯周病菌は、腫れた歯肉から容易に血管内に侵入し全身に回ります

血管に入った細菌は、体の力で死滅しますが、歯周病菌の死骸の持つ内毒素は、残り血糖値に悪影響を及ぼします。血液中の内毒素は、脂肪組織や肝臓からの TNF-αの産生を強力に推し進めます。 TNF-αは、血液中の糖分の取り込みを抑える動きもあるため、

血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまうのです。

また、歯周病が進行すると、毎日の食事に影響が出てきます。歯周病は、初期の段階では歯ぐきの多少の腫れや歯ぐきからの出血が見られる だけですが、進行すると歯ぐきがひどく腫れたり、歯を支える骨が溶けて歯がグラグラしはじめたりするようになります。そうなると、うまく噛めなかったり、噛むと痛みが生じたりして食事に支障をきたすようになります。さらに進行して歯が 1 本、2 本と抜けてなくなってしまうと、噛む力はずいぶん低下してしまいます。入れ歯を入れたとしても自分の歯で噛む場合に比べると、噛む力は 1/4 ~ 1/6 程度になってしまうと言われています。

噛めなくなるということ

噛めなくなるということは、食事により影響を受ける糖尿病の方には重要な問題となります。噛むことに支障が出てくると、軟らかい食べ物を好みようになったり、あまり噛まないまま飲み込んでしまったりする傾向があるようです。 軟らかい食べ物は一般に糖質や脂質を多量に含むものが多く、また噛まないと満足感(満腹感)が得られにくくなる結果、食事量が増えてしまうという悪循環に陥りやすくなります。

また、噛まないことで口の中の刺激が減り、唾液の量も減ってしまいます。唾液の量が減ると、口の 中を洗い流すことができず、口の中を清潔に保てなくなります。また、唾液には抗菌物質も入っているため唾液量の低下は、お口の中の細菌 が増えることにもつながります。

十分に噛めない状態は、お口の中の細菌を原因とする歯周病や虫歯を生じさせたり、進行させやすくなったりするのと同時に、早食い、食べ過ぎ、糖質や脂質の多い食事などによって糖尿病を悪化させることにもなるのです。